年収・総支給・手取りの違いを最初に整理
求人票には「年収500万円」、給与明細には「総支給40万円」、銀行口座への振込額は「約31万円」。
同じ給与の話なのに、数字がいくつも出てきて戸惑った経験はないでしょうか。
結論から整理すると、3つの意味は次のとおりです。
| 用語 | 意味 | 確認する場所 |
|---|---|---|
| 年収 | 1年間に会社から支給された給与・賞与の合計 | 源泉徴収票 |
| 総支給 | その月に支給される控除前の合計額 | 給与明細 |
| 手取り | 税金や社会保険料を引いた後の振込額 | 給与明細・銀行口座 |
会社員の年収は、基本的に税金や社会保険料を引く前の給与・賞与の年間合計です。一方、給与明細の総支給額は、その月の控除前の合計を表します。手取りは、そこから税金や社会保険料などを差し引いた金額です。
ただし、非課税の通勤手当が含まれる場合などは、毎月の総支給額の合計と、源泉徴収票の「支払金額」が一致しないことがあります。
実際に生活費や貯蓄、NISAなどへ使えるのは、税金や社会保険料が引かれた後の「手取り」になります。
年収とは1年間の給与と賞与の合計
会社員の年収は、基本的に1月から12月までに支給された給与と賞与の合計です。
年収を正確に確認したいときは、勤務先から年末または翌年初めに交付される「給与所得の源泉徴収票」を見ます。
源泉徴収票の「支払金額」欄が、その年の給与収入にあたります。国税庁「給与所得者と税」
たとえば、次のような場合です。
- 毎月の給与:40万円×12か月=480万円
- 年間賞与:80万円
- 年収:560万円
ただし、年収560万円をそのまま自由に使えるわけではありません。
ここから健康保険、厚生年金、雇用保険、所得税、住民税などが引かれます。
なお、非課税限度額以内の通勤手当などは、給与明細の総支給額には含まれていても、源泉徴収票の支払金額には含まれない場合があります。
総支給とは給与明細の控除前の金額
総支給とは、その月に勤務先から支給される金額の合計です。
給与明細では「総支給額」「支給合計」などと表示されます。
一般的には、次の項目が含まれます。
- 基本給
- 残業手当
- 役職手当
- 家族手当
- 住宅手当
- 通勤手当
- その他の手当
基本給が同じでも、残業代や各種手当が変われば、毎月の総支給額も変わります。
注意したいのは、総支給額がそのまま銀行口座へ振り込まれるわけではないことです。
給与明細では、総支給額から「控除」の欄に記載された金額を差し引いて、最終的な手取りを計算します。
手取りとは実際に振り込まれる金額
手取りは、総支給額から税金や社会保険料などを差し引いた後の金額です。
給与明細では、次のような名称で表示されます。
- 差引支給額
- 控除後支給額
- 振込支給額
給与計算の基本的な関係は次のとおりです。
手取り=総支給額-社会保険料-税金-その他の控除
その他の控除には、会社によって次のようなものが含まれます。
- 財形貯蓄
- 労働組合費
- 社宅費
- 団体保険料
- 社内積立
- 確定拠出年金に関係する控除
そのため、総支給額が同じ人でも、家族構成や居住地、年齢、会社の制度によって手取りは変わります。
給与明細は「支給・控除・差引支給」の3つを見る
給与明細を確認するときは、細かな項目を最初から全部理解しようとしなくても大丈夫です。
まずは、次の3つを確認します。
支給欄
会社から支給される給与や手当です。
基本給、残業代、通勤手当などを合計した金額が総支給額になります。
控除欄
総支給額から差し引かれる金額です。
主な控除は次のとおりです。
| 控除項目 | 主な役割 |
|---|---|
| 健康保険料 | 医療費や傷病手当金などを支える |
| 介護保険料 | 40歳から64歳までの会社員などが負担 |
| 子ども・子育て支援金 | 2026年度から医療保険料とあわせて徴収 |
| 厚生年金保険料 | 老齢・障害・遺族年金を支える |
| 雇用保険料 | 失業給付や育児休業給付などを支える |
| 所得税 | その月の給与などをもとに源泉徴収 |
| 住民税 | 原則として前年の所得をもとに計算 |
各控除項目の意味や、控除額が増えたときの確認方法は、給与明細の控除について解説した記事で詳しく紹介しています。
差引支給欄
総支給額から控除合計を引いた、実際の振込額です。
家計簿や貯蓄計画、NISAの積立額を考えるときは、年収や総支給ではなく、この差引支給額を基準にします。
月給40万円の手取りはいくらになる?
ここでは、月給40万円の40代会社員を想定したモデルケースを考えます。
モデル条件
- 総支給額:月40万円
- 年齢:40歳から64歳
- 勤務地:東京都
- 協会けんぽ加入
- 一般の事業
- 標準報酬月額:41万円
- 扶養人数や各種控除は個人差があるため概算
2026年度の東京都の協会けんぽでは、標準報酬月額41万円の場合、本人負担の健康保険・介護保険料は約2万3,514円、厚生年金保険料は3万7,515円です。
2026年5月の給与天引き分からは、子ども・子育て支援金も始まっています。このモデルでは本人負担が月約472円です。協会けんぽ「東京都の2026年度保険料額表」
| 項目 | 月額の目安 |
|---|---|
| 総支給額 | 400,000円 |
| 健康保険・介護保険 | 約23,500円 |
| 子ども・子育て支援金 | 約500円 |
| 厚生年金 | 約37,500円 |
| 雇用保険 | 約2,000円 |
| 所得税 | 約7,000~12,000円 |
| 住民税 | 約15,000~25,000円 |
| 手取り | 約300,000~315,000円 |
2026年度の一般事業における雇用保険料の労働者負担は、賃金の0.5%です。厚生労働省「2026年度雇用保険料率」
所得税は扶養人数や社会保険料、各種控除によって変わります。住民税も前年の所得や自治体によって異なります。
そのため、月給40万円の手取りは一律ではありませんが、40代会社員ならおおむね30万~32万円程度がひとつの目安になります。
手取りが総支給の80%とは限らない
一般的に「手取りは額面の約75~85%」といわれます。
ただし、すべての人に同じ割合が当てはまるわけではありません。
手取り割合が変わる主な要因は次のとおりです。
- 年収
- 年齢
- 扶養家族の人数
- 健康保険組合
- 居住する自治体
- 前年の所得
- 生命保険料控除などの所得控除
- 残業代や各種手当
- 社宅費や組合費などの会社独自控除
特に40歳になると、原則として介護保険料の負担が始まります。
また、2026年度からは子ども・子育て支援金も加わったため、前年と総支給額が同じでも控除額が変わる場合があります。協会けんぽ「子ども・子育て支援金率」
社会保険料は単純に総支給額へ料率を掛けるわけではない
健康保険料や厚生年金保険料は、その月の総支給額へ毎回単純に料率を掛けて計算するわけではありません。
基本的には、給与を一定の幅に区分した「標準報酬月額」を使います。
標準報酬月額には、基本給だけでなく、残業手当や通勤手当なども含まれます。
原則として4月から6月の報酬をもとに標準報酬月額が決まり、その年の9月から翌年8月まで使用されます。固定給が大きく変わった場合は、途中で改定されることもあります。日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
この仕組みがあるため、残業が減ったのに社会保険料がすぐには下がらないことがあります。
所得税は毎月の仮払いに近い
給与から引かれる所得税は、毎月の給与と扶養人数などをもとに源泉徴収されます。
最終的な年間税額は、年末調整または確定申告で精算されます。
そのため、年末調整の結果によっては、12月や1月の給与で所得税が戻る場合もあれば、追加で徴収される場合もあります。
2026年度税制改正では、所得税の基礎控除や給与所得控除の最低保障額などが見直されます。原則として2026年12月1日から施行され、2026年12月の年末調整などから影響します。
2026年11月までの通常の源泉徴収事務には変更がありません。国税庁「2026年度税制改正による基礎控除の引上げ等」
住民税は前年の所得で決まる
住民税は、原則として前年の所得をもとに計算されます。
会社員の場合は、通常6月から翌年5月まで、毎月の給与から天引きされます。
そのため、次のようなことが起こります。
- 社会人1年目は住民税が少ない、または引かれない
- 社会人2年目から住民税が始まり、手取りが減る
- 前年に残業や賞与が多いと、翌年度の住民税が増える
- 転職や休職で現在の収入が減っても、住民税がすぐには下がらない
住民税は所得税と計算方法が異なるため、所得税が0円でも住民税が発生する場合があります。東京都主税局「給与明細の見方」
年収と所得は別の意味
年収と似た言葉に「所得」がありますが、意味は異なります。
会社員の場合、給与所得はおおむね次の関係で計算されます。
給与所得=給与収入-給与所得控除
さらに、税金を計算するときは、基礎控除や社会保険料控除なども関係します。
「年収・総支給・手取り」は給与明細や家計管理の話、「年収・所得」は税金や所得控除の話として分けて考えると理解しやすくなります。
詳しくは、関連記事をご覧ください。
「年収」と「所得」ってどう違うの?確定申告や税金との関係を解説
給与明細で毎月確認したい5項目
給与明細を受け取ったら、次の5項目を確認してみましょう。
- 基本給や手当が正しく反映されているか
- 残業時間と残業代が合っているか
- 総支給額が前月から変わった理由
- 社会保険料・所得税・住民税の増減
- 差引支給額と実際の銀行振込額が一致しているか
すべての控除額を暗記する必要はありません。
前月や前年同月と比べて大きく変わった項目がないかを見るだけでも、給与明細の理解は深まります。
よくある質問
年収にはボーナスも含まれますか?
原則として、会社から支給される課税対象の賞与も年収に含まれます。
源泉徴収票の「支払金額」には、毎月の給与と課税対象の賞与が合計されています。
通勤手当は年収に含まれますか?
給与明細の総支給額には含まれることがあります。
一方、一定の限度額まで非課税となる通勤手当は、源泉徴収票の支払金額には通常含まれません。
ただし、社会保険料を計算する報酬には通勤手当も含まれます。
総支給額が同じなのに手取りが変わるのはなぜですか?
住民税の年度切替、標準報酬月額の改定、健康保険料率の変更、年末調整などが考えられます。
40歳になった場合は、介護保険料が始まることもあります。
手取りは年収の何%になりますか?
一律ではありませんが、会社員では年収の75~85%程度が目安として使われます。
ただし、年収、扶養人数、年齢、居住地、加入する健康保険によって変わります。
給与明細と源泉徴収票は何が違いますか?
給与明細は毎月の支給額と控除額を確認する書類です。
源泉徴収票は、1年間の給与収入や所得控除、源泉徴収税額などをまとめた書類です。
毎月の手取りを確認するときは給与明細、年間の年収や税金を確認するときは源泉徴収票を使います。
まとめ
年収・総支給・手取りの違いは、次のように整理できます。
- 年収:1年間の給与と賞与の合計
- 総支給:その月に支給される控除前の金額
- 手取り:税金や社会保険料を引いた後の振込額
家計管理や資産形成では、年収や総支給ではなく、実際に使える手取りを基準に考えることが大切です。
まずは今月の給与明細を開き、「総支給額」「控除合計」「差引支給額」の3か所を確認してみましょう。
参考資料
- 国税庁|給与所得者と税
- 国税庁|2026年分 源泉徴収税額表
- 国税庁|2026年度税制改正による基礎控除の引上げ等
- 日本年金機構|厚生年金保険の保険料
- 協会けんぽ|2026年度保険料額表
- 協会けんぽ|子ども・子育て支援金率
- 厚生労働省|2026年度雇用保険料率
- 東京都主税局|給与明細の見方
免責事項
本記事は、2026年8月時点の公的資料と一般的なモデルケースをもとに作成しています。
実際の給与、税金、社会保険料、手取り額は、勤務先、居住地、加入する健康保険、年齢、扶養人数、各種控除などによって異なります。
正確な金額は、給与明細、源泉徴収票、勤務先の給与担当者、税務署、自治体などへご確認ください。



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