ネットワークエンジニアを目指す場合、どの資格から取得すればよいのでしょうか。
候補を調べると、CCNA、CCNP、基本情報、応用情報、ネットワークスペシャリストなど、多くの資格が出てきます。しかし、すべて取得する必要はありません。学習時間、受験料、有効期限を考え、仕事に合うものを選ぶ必要があります。
私は20歳からインフラエンジニアとして働き、現在46歳です。ネットワークを中心に、サーバ、ファイアウォール、クラウドを含むインフラ業務に26年間携わってきました。
約20年前にはCCNAを取得し、その後、新人研修でCCNA取得カリキュラムの作成と研修を担当しました。一度認定を失効させた後、試験改定後のCCNAを再取得した経験もあります。
その経験から、ネットワークエンジニアの資格は、次の順番で考えるのが分かりやすいと思っています。
CCNAで業界への入口を作り、実務経験を積んだらネットワークスペシャリストを目指す。その先は、セキュリティ、プロジェクト管理、Cisco専門職のうち、自分の業務に合う方向へ進む。
この記事では、資格の取得順と仕事へのつなげ方を解説します。
結論|まずCCNA、その後はネスペを軸に進路を選ぶ
私がおすすめする基本的なロードマップは、次のとおりです。
| 段階 | 資格 | 目的 |
|---|---|---|
| STEP1 | CCNA | ネットワークの基礎を体系的に学び、業界へ入る |
| STEP2 | ネットワークスペシャリスト | ベンダーに依存しない専門性を証明する |
| STEP3-A | 情報処理安全確保支援士試験 | セキュリティ分野へ専門性を広げる |
| STEP3-B | プロジェクトマネージャ試験 | プロジェクト管理・マネジメントへ進む |
| 別ルート | CCNP・CCIE | Cisco製品を扱う専門職として深める |
ITの基礎用語がほとんど分からない人は、CCNAの前にITパスポートを入れます。CCNAからネットワークスペシャリストへの難易度差が大きい場合は、途中に応用情報技術者試験を入れる方法もあります。
ただし、ITパスポートも応用情報技術者試験も必須ではありません。現在の知識と実務経験に合わせて、次のように選びます。
| 現在の状況 | おすすめルート |
|---|---|
| IT知識がほとんどない | ITパスポート→CCNA |
| IT経験はあるがネットワーク未経験 | CCNA |
| CCNA取得後、IPA試験が難しい | 応用情報→ネスペ |
| ネットワーク実務経験がある | CCNAまたはネスペ |
| Cisco製品を専門に扱う | CCNA→CCNP→CCIE |
| セキュリティへ進みたい | ネスペ→支援士試験 |
| 管理・PMへ進みたい | ネスペ→PM試験 |
完全未経験ならITパスポートから始めてもよい
CCNAの参考書を読んでも専門用語がほとんど分からない場合は、先にITパスポートを学ぶ方法があります。
ITパスポートはネットワーク専門資格ではありませんが、IT、経営、法務、マネジメントなどの基礎用語を幅広く学べます。ただし、ネットワークエンジニアを目指すなら、取得後はCCNAの学習と実機・シミュレーターによる練習へ進みます。
私がITパスポートの過去問題100問を無勉強で解いた結果と、現場での評価については、次の記事にまとめています。
→ ITパスポートはインフラエンジニアに必要?インフラ歴26年が無勉強で100問解いた結果
STEP1|最初にCCNAをおすすめする理由
ネットワークエンジニアを目指す未経験者や若手には、最初の専門資格としてCCNAをおすすめします。
CCNAは、Cisco Systems社が認定するベンダー資格です。現在の試験では、ネットワークの基礎だけでなく、次のような分野が扱われます。
- ネットワークの基礎
- ネットワークアクセス
- IPコネクティビティ
- IPサービス
- セキュリティの基礎
- 自動化とプログラマビリティ
ルーティングやスイッチングだけを覚える資格ではありません。現在のネットワークエンジニアに必要な知識を、広く体系的に学べます。
CCNAを持っている若手は信頼しやすい
CCNAだけで、すぐに設計や障害対応ができるわけではありません。それでも未経験者や若手が取得していれば、次のことは判断しやすくなります。
- IPアドレスやサブネットの基礎を学んでいる
- VLANやルーティングの役割を理解している
- セキュリティや自動化を含む範囲を一通り学習した
- 難易度のある試験へ継続して取り組んだ
実務経験がない人にとって、学習した事実を履歴書で示せる材料になります。知名度と内容の両面で、業界への入口として手堅い資格です。
私はCCNAを2回取得した
私が最初にCCNAを取得したのは、約20年前の新卒2年目でした。
当時は現在ほど広く知られておらず、これから評価が高まる新しい資格という印象でした。ネットワーク業界では、Cisco機器を扱えることが現在以上に強く求められていた時代でもあります。
その後、社内の新人研修を担当することになり、CCNA取得を目標としたカリキュラムの作成と研修を行いました。
私は一度CCNAを失効させていましたが、研修担当として改めて試験を受け、2回目のCCNAを取得しました。
2回目は試験改定後で、最初より範囲が広くなったと実感しました。現在はセキュリティ、自動化、プログラマビリティまで含まれるため、未経験者にとって簡単ではありません。一方、現場でCisco機器に触れる人が経験を体系化するには適しています。
CCNAは資格取得後の維持も考える
CCNAの注意点は、学習費、受験料、認定維持の負担です。認定の有効期間は3年間で、維持するには対象試験への合格や継続教育プログラムなど、Ciscoが定める方法で更新します。
個人でも取得できますが、次のような会社の支援があると挑戦しやすくなります。
- 検証機器や学習環境の提供
- 研修・スクール費用や受験料の補助
- 資格手当や合格時の報奨金
- 業務時間内での学習支援
Ciscoの販売パートナー認定などの関係で、認定資格者の確保を重視する企業もあります。そのような会社では、個人の学習と会社の利益が一致しやすくなります。
STEP2|CCNAの次はネットワークスペシャリスト
CCNA取得後にネットワーク業務を経験したら、次の目標としておすすめしたいのが、IPAのネットワークスペシャリスト試験です。
ネットワークスペシャリストは、特定メーカーの製品操作ではなく、ネットワークの設計、構築、運用、障害対応、セキュリティなどについて、ベンダーに依存しない知識が問われます。
ネスペをおすすめする理由
ネットワークスペシャリストをおすすめする理由は、次のとおりです。
- 特定ベンダーに依存しない
- 試験合格自体に有効期限がない
- 受験料と維持費を抑えやすい
- ネットワーク専門家として知名度がある
- 実務経験で得た知識を体系的に整理できる
- 設計や障害対応の根本的な理解が求められる
CCNAがネットワーク業界へ入るための資格なら、ネットワークスペシャリストは、業界内で専門性を示すための資格という位置づけです。
ネスペは暗記だけでは難しい
ネットワークスペシャリストには、長文のネットワーク構成や障害状況を読み、原因、設計意図、改善方法などを記述する問題があります。用語の暗記ではなく、「なぜこの構成にするのか」「障害はどこか」を考える力が求められます。
なお、ネットワークスペシャリストは記述式であり、プロジェクトマネージャ試験のような論述式、いわゆる小論文試験ではありません。
経験者でも、一般的なIT知識や試験特有の解き方には対策が必要です。
試験制度の変更に注意する
2026年度から、ネットワークスペシャリストを含む高度試験はCBT方式へ移行しています。また、2027年度からは新しい試験制度への移行が予定されています。
試験情報について
試験方式、受験料、実施時期、科目名、認定更新条件は変更される場合があります。受験前にCiscoおよびIPAの公式サイトで最新情報を確認してください。
CCNAからネスペが難しければ応用情報を挟む
CCNAとネットワークスペシャリストでは、出題範囲と難易度に大きな差があります。
ネットワークスペシャリストの過去問題を見て、基礎知識や記述問題への対応が難しい場合は、先に応用情報技術者試験を受ける方法があります。応用情報では、技術、マネジメント、経営を含む幅広い知識が問われます。ただし、資格を順番どおりにすべて取得する必要はありません。
- 実務経験が少ない:応用情報を経由する
- ネットワーク実務と基礎知識がある:直接ネスペを目指す
- 会社でCisco資格が評価される:CCNPを優先する
このように、自分の経験と勤務先の評価制度に合わせて選ぶ方が効率的です。
STEP3|ネスペ取得後はキャリアに合わせて分岐する
ネスペの次は、セキュリティ、プロジェクト管理、Cisco専門職など、実際に担当する業務に合わせて選びます。
セキュリティを深めるなら情報処理安全確保支援士試験
ファイアウォール、SOC、CSIRT、脆弱性管理、セキュリティ設計などへ専門性を広げたい人には、情報処理安全確保支援士試験が候補になります。
注意したいのは、「試験合格」と「資格登録」が別であることです。
試験合格後、所定の手続きを行うことで、国家資格「情報処理安全確保支援士」を名乗れます。一般的な呼び名は「登録セキスペ」です。
新規登録時には、登録手数料10,700円と登録免許税9,000円の合計19,700円が必要です。登録後は講習受講と更新も必要なため、合格後に必ず登録する必要はありません。
- 業務上、登録資格が必要か
- 会社が登録費用や講習費を負担するか
- セキュリティ専門職として活動するか
- 継続的に講習を受ける意思があるか
これらを確認して判断します。
プロジェクト管理へ進むならプロジェクトマネージャ試験
技術専門職ではなく、プロジェクト全体を管理する立場へ進むなら、プロジェクトマネージャ試験が候補になります。
個別製品の設定ではなく、プロジェクト計画、スケジュール、コスト・品質・リスク管理、ステークホルダーとの調整、チーム運営などの知識と経験が問われます。
IPAの高度試験に位置づけられる難関試験の一つで、論述式問題があります。知識に加え、自分のプロジェクト経験を整理して説明する力も必要です。求人や社内の役割によっては、管理経験とともに評価材料になります。
Cisco専門職として進むならCCNP・CCIE
業務でCisco製品を継続的に扱い、Ciscoの販売・構築パートナー企業で働いている人には、CCNPやCCIEへ進む選択肢があります。
特にCCIEは難易度と知名度が高く、Cisco技術を中心としたネットワーク専門家として、高い知識と技術力を示す有力な資格です。
ただし、全員が目指す必要はありません。会社から受験料・研修費の支援を受けられるか、取得が昇進や資格手当に結びつくか、今後もCisco製品を扱うかを確認して判断します。
私自身、当時の勤務先ではCCNPがそれほど必要とされず、資格手当もありませんでした。個人で認定を維持し続けるメリットを感じなかったため、CCNPへは進まず、現在はベンダー資格を保有していません。
それでも、若手や未経験者が最初にCCNAを取得する価値は高いと考えています。入口としてのCCNAと、専門職として維持するCCNP・CCIEは分けて考えるべきです。
ネスペ・支援士・PMは上下ではなく方向性の違い
ネスペ、PM、支援士試験はいずれも高いレベルの知識が求められます。「ネスペよりPMが上」といった上下関係ではなく、役割の違いです。
| 目指す役割 | 資格候補 |
|---|---|
| ネットワーク専門家 | ネットワークスペシャリスト |
| セキュリティ専門家 | 情報処理安全確保支援士試験 |
| プロジェクト管理 | プロジェクトマネージャ試験 |
| Cisco専門家 | CCNP・CCIE |
自分の業務と将来像に合う方向を選ぶことが重要です。
民間資格・ベンダー認定と国家試験の違い
ネットワークエンジニア向けの資格は、大きく民間資格・ベンダー認定と国家試験に分けて考えられます。
| 比較項目 | 民間資格・ベンダー認定 | IPAの国家試験 |
|---|---|---|
| 主な例 | CCNA・CCNP・LPIC・LinuC | 応用情報・ネスペ・PM |
| 評価されやすい場面 | 対象製品や技術を扱う企業 | ベンダーに依存しない知識を求める企業 |
| 学習内容 | 製品・技術に近い実践的な内容 | IT全般または専門分野の体系的な知識 |
| 取得費用 | 比較的高い場合がある | 受験料を抑えやすい |
| 有効期限 | 更新が必要な資格がある | 試験合格自体は原則として更新不要 |
| 試験機会 | 比較的受験日を選びやすい | 実施期間が限られる試験がある |
| 向いている人 | 対象製品を扱う人、転職で即効性を求める人 | 長期的に専門性を証明したい人 |
民間資格やベンダー認定には、CCNAのように特定メーカーの技術に近い資格と、LPIC・LinuCのようにベンダーに依存しにくい資格があります。対象となる製品や技術を扱う企業で評価されやすい一方、受験料、有効期限、更新費用を考える必要があります。
国家試験は特定メーカーに依存せず、過去問題や参考書が充実していますが、実務で扱わない分野も学ばなければなりません。
なお、情報処理安全確保支援士は、試験合格後に資格登録する場合、講習受講と登録更新が必要です。
資格だけではネットワークエンジニアになれない
資格は、知識を学び、学習したことを証明するために役立ちます。
しかし、資格を取得しただけで、ネットワークエンジニアとして仕事ができるわけではありません。
現場では、次のような力も求められます。
- 構成図を読んで通信経路を把握する
- 設定変更前に影響範囲を確認する
- 障害発生時に原因を切り分ける
- 作業手順と切り戻し手順を作る
- ログやパケットを確認して原因を調べる
- 顧客や他チームへ説明し、判断理由を文書に残す
資格学習と並行して、Packet Tracer、仮想環境、クラウド、自宅のネットワークなどを使い、実際に手を動かすことが重要です。
資格は現場へ入るための材料になります。現場へ入った後は、実務経験を積みながら、次の資格を選んでいくのが現実的です。
インフラエンジニアの仕事内容や、未経験転職の現実については、次の記事で詳しく説明しています。
→ インフラエンジニアって実際どう?稼げる?未経験でもなれる?現役26年の本音
ネットワークからクラウドへ広げる場合
現在のインフラ業務では、オンプレミスのネットワークだけでなく、AWSやAzureなどのクラウド知識も求められます。
CCNAやネットワークスペシャリストで身につけたIPアドレス、ルーティング、DNS、VPN、ファイアウォールなどの知識は、クラウドでも役立ちます。
ネットワークを軸にしながらクラウドへ領域を広げたい場合は、AWSやAzureの基礎資格を追加する方法があります。
→ インフラエンジニアにおすすめのクラウド資格|ネットワーク経験者の学習順序
よくある質問
ネットワークエンジニアになるにはCCNAが必須ですか?
必須ではありません。CCNAを持っていなくてもネットワークエンジニアとして働けます。ただし、未経験者がネットワークの基礎を体系的に学び、転職時に学習実績を示す資格としては有力です。
CCNAの前にITパスポートや基本情報は必要ですか?
必須ではありません。ITの基礎用語が分からない場合はITパスポート、プログラミングやIT全般も学びたい場合は基本情報が候補になります。ネットワークエンジニアを明確に目指しているなら、直接CCNAへ進む方法もあります。
CCNAの次はCCNPとネスペのどちらがおすすめですか?
勤務先と担当業務によって変わります。Cisco製品を継続して扱い、会社の資格支援があるならCCNPが有力です。ベンダーに依存しない専門性を身につけ、長期的に資格を残したいならネットワークスペシャリストをおすすめします。
ネットワークスペシャリストの前に応用情報は必要ですか?
必須ではありません。ネットワークの実務経験とIT全般の基礎知識があれば、直接受験できます。過去問題を解いて難しいと感じた場合は、応用情報を経由すると学習しやすくなります。
情報処理安全確保支援士試験に合格したら登録すべきですか?
業務上の必要性によります。登録すると国家資格名を使用できますが、新規登録費用、講習受講、更新が必要です。勤務先の費用補助や、セキュリティ専門職として登録するメリットを確認して判断します。
資格取得と実務経験はどちらが重要ですか?
経験者の場合は実務経験の方が重視されます。一方、未経験者は実務経験がないため、資格が学習意欲と基礎知識を示す材料になります。資格で現場への入口を作り、現場で経験を積むという使い方が現実的です。
まとめ|資格は集めるのではなく、仕事に合わせて選ぶ
基本ルートは、CCNAで業界への入口を作り、実務経験を積んでネットワークスペシャリストを目指す流れです。その後は、セキュリティなら情報処理安全確保支援士試験、管理ならプロジェクトマネージャ試験、Cisco専門職ならCCNP・CCIEへ分岐します。
資格は、多ければ多いほどよいわけではありません。
業務で使わないベンダー資格を自費で維持し続けるより、現在の仕事や次に担当したい仕事に合う資格を選ぶ方が効果的です。
資格の知名度だけで決めず、自分がネットワーク、セキュリティ、プロジェクト管理のどこへ進みたいのかを考えます。資格取得をゴールにせず、学んだ内容を現場で使い、実務経験を次のステップへつなげることが重要です。
参考資料
- Cisco「CCNA」
- Cisco「200-301 CCNA」
- Cisco「Recertification Policy」
- IPA「ネットワークスペシャリスト試験」
- IPA「プロジェクトマネージャ試験」
- IPA「情報処理安全確保支援士試験」
- IPA「情報処理安全確保支援士になるには」
- IPA「スケジュール、手数料など」
免責事項
本記事は、筆者個人の実務経験と2026年9月時点で確認した公式情報をもとにしています。資格取得、就職、転職、昇進、資格手当などを保証するものではありません。試験範囲、受験料、認定期間、更新条件、試験方式、実施時期、登録・講習費用などは変更される場合があります。受験やサービス申込の前に、必ず各運営元の最新情報をご確認ください。


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